PMP 通信 : 長澤運輸事件 高裁判決

今年5月、東京地裁は定年再雇用後の賃金減額を労働契約法第20条違反としましたが、これ
に対する東京高裁の判断が11月2日に出ました。結果は逆転。会社側の勝訴となりました。
定年再雇用者の賃金見直しは広く実際されており、この高裁判断でホッとされた経営者や人事
部長も多いと思います。

地裁・高裁とも定年再雇用者の処遇を考える際に、労働契約法第20条の適用を認める点は
共通しています。
労働契約法第20条とは(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあ
ることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内
容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及
び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、①当該職務の
内容及び ②配置の変更の範囲 ③その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであって
はならない」 注:「①」「②」「③」の付記は筆者

地裁では、労働契約法第20条の①②を重視したのに対して、高裁は③も同様に考慮に加える
として、「定年到達者の雇用を義務付けられてきたことによる賃金コストの無制限の増大を回
避して、定年到達者の雇用のみならず、若年層を含めた労働者全体の安定的雇用を実現する必
要がある」ため「定年再雇用者の賃金減額は広く行われており」、「社会的に容認されている」
と判断しました。
なお、原告側はこの判決を不服として最高裁まで争う構え。最高裁の判断まではさらに1年程
度はかかるものと思われます。

この時点で人事管理上注意すべき点としては、まずは定年再雇用者の処遇に際しても労働契約
法第20条の適用下にある事、次に、①職務の内容 ②配置の変更の範囲を考慮する事。これら
は地裁・高裁の判断とも一致しています。ここから導かれる実務上の留意点は、定年前の職務
内容・職責や異動の可能性を一切変更せずそのままとし、定年再雇用のみを理由として賃金ダ
ウンすることのリスクです。
実際は、社内に代替できるノウハウを持った人材がいないとか、余人をもって代えがたいとい
う事情からかような事例は散見されています。これらの場合、少なくとも該当者る社員の定年
到来の3-5年前から後継者養成を計画的に始動させることを人事は経営に提言すべきでしょう。

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